
(20:10)インマルサット(衛星)を通じて今日本の新聞サイトに接続しました。凄まじい民主党の勝利ですね。ま、それはさておき、ちょっと日本からは遠いブータンからの報告を。
――――――――――
「微笑みの国」と呼ばれるタイから入ったので非常に目立つのですが、ブータンは「微笑まない国」と呼ぶことも出来ると思う。一番顕著だったのはバンコクから乗ったブータン航空の女性搭乗員。
属人的な面もあると思うが、とにかく我々を担当してくれた女性二人はまず微笑まない。こちらが微笑みながら話しかけても通常においては微笑まないし、むしろこちらが微笑みながら話しかけると、顔と身を固くして厳しい顔でサーブしているという印象がした。これは私だけでなく、並びの席にいた女性の風戸さんもそう言っていた。
なぜブータンは「微笑まない国」なのか。今のブータンにおけるキャビン・アテンダントのスタンディングは、「お手伝いさんがいるような家、つまり上流のお嬢さんがなる職業」ということなのだそうですが、「そもそもサービスという概念がない」のがブータンだそうで、そう言えばお店に行ってもあまり「売ろう」という気概が伝わってこない。「買いたいんなら売ってやる」という姿勢だし、「それで良い」と思っているというのです。
とすると分かる。そもそもこちらが搭乗しても、位の高いブータンの家庭から就職しているブータンの搭乗員は、「微笑みかけてブータン航空の印象を良くしよう」という意識が最初からないのだ。これは、最近一段と磨きがかかってきたのですが、日本を代表する二つの航空会社の女性搭乗員の微笑み合戦とは全く反対の位置にある。ブータンに来る直前に山口空港から飛行機(ANAでした)で羽田まで移動しましたが、日本の彼女らは目があっただけで必ず微笑む。
面白いことを言っていたのは、現地添乗員のジュルさん(日本に留学経験あり)の奥さんである青木さんの証言。彼女はブータン人との結婚について父親の許しを得るために3年間も遠距離恋愛を続けた上でジュルミさんと結婚し、今はブータンで9年目に入ったという人。その彼女が、最初知らない男性にでも日本人的に目が会ったときなどに微笑んでいたら、ジュルさんから「”知らない人になんか微笑むな”」と注意された、というのです。
つまり、ブータンではそもそも「知らない人に微笑む」という習慣がない。逆に女性がある相手に微笑んだりすると、それは「私は気がありますよ」というサインになる危険性がある、というのです。青木さんが私たちのグループに加わって話をしてくれている時にしばらく見比べていたのですが、青木さんはブータンの女性の100倍くらい笑顔が多い。その横で私たちにサーブしてくれるブータンの女性は全くと言って良いほど微笑まない。非常に対照的でした。
そこまで聞くと「こちらが微笑みながら話しかけると、顔と身を固くして厳しい顔でサーブしている」という前述の文章がおわかり頂けると思うし、私もそれで納得がいった。ところ変われば基本的な対人スタンスも変わると言うことです。
しかしだからといってブータンの人々が微笑まないか、笑わないかというとそれは違う。仲間内では凄く笑うし、親しくなれば別です。私と辻さん、風戸さんで行ったお店で凄く会話しながらやり取りしていて話していたら、すっごく親しくなってブータン人4人、日本人3人、その店に来たインド人(モンゴル系、日本に5年の留学経験ありで、ブータンで英語の家庭教師中)など総勢10人くらいで話したときにはお店がうるさいくらいになった。笑いの渦になったわけです。
だから、多分ブータンの人々も家では笑っている。あと男性は、女性よりも知らない人にでも笑みに応じてくれるように思う。ただしこれにも確信がないのは、例えば工事現場などで働いている人も見ていて目があって笑いかけると、向こうからちゃんと笑みが返ってくるのです。しかしその人の顔を見ると、どう見てもインド人なのです。ブータン・ネーティブには見えない。まだ聞いていませんが、多分ブータンには多くのインド人が出稼ぎに来ている。
あと面白かったこと。ブータンでは義務教育制度はなく、しかし初等、中等教育にかかる費用は国がもってくれるというのです。つまり、学校に行ける子(田舎などに住んでいると物理的に学校に行けない子もいると思う)が行けば、それはただといういうのです。加えてブータンは「医療はただ」ということですが、私が疑問に思ったのは「そのお金は誰が出しているのか」という点です。
どうもそれは、日本もむろんそれに入るのですが、諸外国からの援助からだだというのです。外務省のページを見てもブータンの年間予算は分かりませんが、輸出品は対インドのリンゴなど果実、それに水力発電による電力というのですからたかが知れている。私が見た限りでは、教育や医療をタダに出来るほど豊かな国には見えない。としたら、「それってどういうこと」ということになる。
まあでもそう言うことがありながらも、この国は国民が自国に対してプライドが高い国だし、変に自己主張するのでもないし、微笑みがちょっと足りなくても「良い国だな」と思う。大体山道ばかりでスピードが出せない。恐らく経済も国民の暮らし方も、そうなんですよ。それを受け入れているし、愉しんでいる。
だからといってやたらに静かな国かというと違いますよ。夕べは土曜日の夜だったので、泊まったティンプーのホテル(市の中心)の近くは夜遅くまで結構な喧噪があった。若者の声、ディスコ的な音楽の音、そして夜になると活動し始める犬(インドと同じで昼は全く泣きもせず寝そべっている)の吠える声。
総体から見ると、なかなか良い国、面白い国だと思って移動しているのです。



